北の零年「あんたは亭主に捨てられたんだよ2」

東映 2005年1月15日公開
2004年製作、香川照之さん38歳頃の作品です。 
 

香川照之ファン的みどころ

香川さんはこの映画で吉永小百合さんと初めて共演しました。香川さんの著書「日本魅録」によると、香川さんをキャスティングは吉永小百合さんの意向によるものだったようです。

「以前『OUT』という映画を見まして、香川さんのやられた(十文字という)役は悪い方なんですが、どこか憎めないチャーミングさがありましたもので、この倉蔵という役も、ぜひ香川さんにやっていただきたいと思いました。」(「北の零年」の面々① P.193~P.194より)

その言葉に応えるように、香川さんの「騙す・犯す・放火すると三拍子揃った悪徳薬商人」(同 P.193 より)の持田倉蔵は、悪役でありながらとても魅力的です。

日本魅録194-195

ところで、演じた香川さんに「放火する」と紹介されている倉蔵ですが、本編中、火災に触れるシーンは一切ありません。この作品のプレス向け資料には、吉永小百合さん演ずる小松原志乃を含む移民団を「食糧倉庫の火災」という不幸が襲うのですが、これも劇中に登場することはありません。

また、香川さんがドラマ「アンフェア」の番宣で「グータンヌーボ」に出演した際に、「北の零年」で吉永小百合さんと共演した時のことを語っていて、初対面にも関わらず、最初の撮影が吉永さんを雪の中で犯すシーンで、助けに入った豊川悦司さんに胸ぐらをつかまれて「(香川さんによる、低い声マネで)お前みたいなヤツは死んでしまえぇぇ。」と言われ、その下で香川さんは「(本当にそうだな…。)」と思った、と語っていたのですが、本編ではそのカットはありません。

「今回が長編9作目になるという行定勲の、助監督時代に最も影響を受けた監督は岩井俊二であり、最も支持する監督は相米慎二であるという。だから行定も、とにかくよくフィルムを回してくる。(略)今回の「北の零年」でも、シーンのマスターショットを様々なパターンで押さえる手法を遂行、俳優陣は同じ芝居を一日に30回はさせられている。」(「北の零年」の面々② P.230~P.231より)

撮影はされたものの、使われなかったカットはもちろん、場面もいろいろとあったのかもしれません。
香川さんは、このほかにも、この映画の撮影現場や、その後の日本アカデミー賞授賞式でのエピソード(「日本魅録2 『SAYURI in アカデミー』)について、楽しげに語られています。一読してから本編を観賞すると、また違った味わい方ができます。


香川照之ファン的あらすじ

舞台は明治維新直後の、北海道の静内です。
明治政府の命により、徳島藩の淡路から移住してきた稲田家の人々が、開拓1年目の秋、虻にふんどしの中をさされて痛がっている中野又十郎(阿部サダヲ)を囲み、皆で談笑している場面で、香川さんが登場します。



すこし離れたところから、人当たりの良い穏やかな調子で「丁度、よい薬がございます。」と言葉をかけます。
行商姿で、手には「天下無二良薬 仙薬丸 持田倉蔵製」と書かれた幟を持っています。

北の零年「よい薬」

移民団の中心的存在である小松原英明(渡辺謙)が、鋭い目、低い声で「何者だ」と問うと、一瞬引くのですが、すぐに笑顔を浮かべながら、物腰柔らかく「薬売りの倉蔵と申します。」と名乗ります。

北の零年「倉蔵と申します」

「どこから来たのだお主。」と尋ねる声には、「札幌でございます。」と答え、続けて、その場の人々に取り入る様に「淡路では皆様に、大層お世話になりました。」と明るく言ってみるのですが、誰もが無反応で、どうも倉蔵のペースに持ち込むことができません。

薬を早く欲しがる又十郎の差し出す手をよそに、場の反応を見定めるようとしていた倉蔵ですが、はっとして「あ忘れておりました。」と、懐から大きな書状入れを出します。

「お国許の内田様から書状を預かってまいりました。」
そう言うと、それまでの作為的な張りのある声色から一転、小さな声で「これはどちらに・・・」と周りを見回しながら尋ねます。
小松原が急いでそれを受け取ります。

北の零年「書状を」

その頃、淡路から北海道への開拓団は、小松原を含む先遣隊に続き、小松原の妻・志乃(吉永小百合)を含む移住第一弾の人々が入植していました。
すぐに第二弾の到着も予定されていたのですが、いつまで経ってもその船はやって来ず、皆は来る日も来る日も、連絡を待つばかりだったのです。

書状は小松原から稲田家家老の堀部賀兵衛(石橋蓮司)に手に渡され、読み上げられます。
倉蔵が届けたその書状の中身は、第二次移住団を乗せた船が、紀州沖で難破したことを知らせるものでした。
死者83名の中には、その場で聞いていた人々の家族や親類もいて、沈痛な空気が流れます。

そこへ、雪がちらついてきたのを見ると、倉蔵は黙って一礼し、急いで立ち去ろうとします。

北の零年「雪で立ち去る」

ところがその倉蔵の前に、馬宮伝蔵(柳葉敏郎)と加代(石田ゆり子)の一人息子・雄之介(大高力也)が立ちふさがり、「この男の正体が見えぬのか!」と叫びます。

北の零年「この男の正体」

「この男の後ろには、空から落ちる火の玉が見える!」そう言って、雄之介がその場に倒れると、倉蔵は逃れるように去ってゆきます。

北の零年「逃げ去る」

その冬に、雄之介は病死してしまうのでした。


春になると、ようやく稲田家当主が開拓地を訪れますが、廃藩置県が施行され、開拓地は明治政府の開拓史のものになったと告げると、移住団を残し、その日のうちに帰ってしまいます。
政府に裏切られた上、主君にも見捨てられたと悟った稲田家の人々は、一度は絶望するものの、小松原を先頭に、自ら髷を切り落とし、「新しい我らの国を創る」ことに希望を見出し、開拓地に生きることを決心します。


ある日、開墾地を耕す人々の前に、政府の役人がやってきます。
扶持米を与えるために、戸籍を作りに来たのです。
しかし、新政府に不信感を抱く小松原が、それを断ってしまいます。
役人が帰路、立腹しながら馬を走らせていると、道をさえぎる様に、倉蔵がスライディング土下座で現れます。

北の零年「スライディング土下座」

なんだお前は!と尋ねる役人に、「薬売りの倉蔵と申します。あの村に出入りしている者でございます。」と名乗り、「戸籍を作れば、役所から、扶持米が出ると聞きまして」と、取り入る笑顔で話します。
やつらには一粒もやらん、と答える役人に、「いかにもいかにも。ただでやることはございません。」と持ちかけます。

北の零年「ただでやることはございません」

お主、何が言いたいんだ、と尋ねる役人のアップでこのシーンは終わりますが、このやり取りは、倉蔵がまっとうな行商人ではないことを伺わせます。


農民の川久保栄太(平田満)が、元家老の堀部に、淡路の農法ではどうしても米が根付かないと訴えます。
堀部は小松原に、札幌の農園へ行き、この土地でも実る稲があるか調べてくるよう依頼します。
引き受けた小松原は、田植えに間に合わせるよう、長くても半月で帰ると言い残し、村を後にします。

しかし、それきり小松原が戻らぬまま、村には二度目の冬が訪れます。
夫の身を案じる志乃の前に、村の女性達が詰め寄ります。
「小松原どのは、いったいいつになったらお帰りになるのですか。」
「我らのための稲をと申されたが、結局殿の様に、我らを見捨てられたのではないか。」
「こんなことなら、開拓史から扶持米をもらっておくべきだったんです。」
「それを止められたのは、小松原どのなのですよ。」
このままではわれら皆飢え死にしてしまう、と口々に責めます。

そんな、食料に困窮した村に、「倉蔵が来たぞぉーっ。」というふれ声とともに、荷物を満載した馬ソリと数人の手下を従えた倉蔵がやってきます。

北の零年「倉蔵が来たぞ」

「地獄に仏とはこのことだ。」
「お前の顔が仏に見えるぞ、倉蔵。」
村人達に歓迎の言葉をかけられ、倉蔵は「いや、それはまた、随分むさくるしい仏ですな。」と応じます。

北の零年「地獄に仏」


堀部が、小さな包みを差し出しながら、「恥ずかしながら、我らに渡せる金はこれしかないが、足りない分は鹿の皮でなんとか」と交渉しようとすると、倉蔵は「分かってます。何を差し置いても皆様に、できるだけのことをさせていただきます。」と答え、その言葉に安堵した一同を前に、手下達に「おい。」と声を掛けます。
「これは、旦那からの、おすそ分けだ!」手下達が、村人達に告げ、振る舞い酒を始めると、「これを飲めば、あったまりますぞ!」と倉蔵が声を張り上げます。

北の零年「あったまりますぞ」


「お主、小松原の噂を聞かんか。」馬宮が倉蔵に尋ねます。「もう、半年も音沙汰が無いんだ。」
倉蔵は「いえ、存じませぬ。」と答えます。

北の零年「存じませぬが」

しかし、馬宮が仲間に呼ばれて去った後は、とぼけてその場をやりすごしたが良い情報を得た、という顔で鼻を親指でこすります。
そして倉蔵が気づくと、少し離れたところに、志乃が立っていました。夫の消息を、馬宮と同じく、倉蔵に尋ねようとしていました。

志乃の住まいを訪れた倉蔵は、部屋に正面を向けていた浄瑠璃の人形の鼻を指で押しやり、顔を横へ向かせます。
見られたくない思惑を抱いていることを示しています。

北の零年「志乃の家」


お茶もないのですが、と白湯を差し出す志乃に、倉蔵は穏やかに話し始めます。
「私、この地に落ち着くことにいたしました。」と告げ、「あなた様に、ほんの、挨拶代わりです。」と、着物を差し出します。
志乃が受け取らずに、「小松原のことなのですが」と切り出すと、倉蔵は、やや機嫌をそこねた様に「小松原様は、帰ってきませんよ。」と答えます。

北の零年「小松原様は帰ってきませんよ」

なぜです、と尋ねる志乃に、小松原には女が出来た、札幌で、ちらりと見かけたと語り、「西洋の服を着た、綺麗なご婦人と一緒に、馬車に乗っておいででした。」と言います。
志乃が、うそです、あの人はそのような人ではないと反論すると、倉蔵は強い調子で「見たんだからしょうがない。」と応えます。
戸惑う志乃に膝を寄せると、「小松原様はこう、風に乱れたご婦人の髪を慈しんで、直しておやりでした。このように」と、志乃の頬に、右の手の甲を当てます。

北の零年「このように」

その手を払いのけながら「何をなさいます!無礼な」と志乃が責めると、倉蔵の態度はいよいよ横柄になります。

「なぁにが無礼だ。あんたもなんにも分かっちゃいないね。」
後ずさりする志乃に迫りながら、たたみ掛けます。
「この世の中、変わったんだよ。」

「俺はもうただの薬売りじゃない。侍と言って威張っていても、今じゃあんたらただの百姓だ。俺がいないと、あんたも、他の奴らも、食っていくことが出来ないんだよ?」

北の零年「食っていくことができないんだよ」

志乃に頬を叩かれても、倉蔵は止めません。
「あんたは亭主に捨てられたんだよ。」

北の零年「あんたは亭主に捨てられたんだよ」

北の零年「あんたは亭主に捨てられたんだよ2」

「信じませんそんなこと」叫びながら逃がれようとする志乃に、さらに迫ります。
「女一人で生き残れるとでも思っているのか。」
志乃を押さえ込むと、無理やり口づけをしますが、志乃に噛まれてしまいます。
倉蔵がひるんだ隙に、戸外へと志乃は走り出ます。

後に続き、さらに追いかけ、雪の中、とうとう志乃を捉えると、「悪い様にはしねぇよ。」と、襲い掛かります。

北の零年「襲う」

北の零年「襲う2」


二人がもみ合っている傍らの樹に、ナイフが飛んできて突き刺さります。

北の零年「襲う3」


驚いた倉蔵が目を見張ると、そこにいたのは、アイヌのアシリカ、実は会津藩士・高津政之(豊川悦司)でした。
彼は稲田家の人々が入墾して以来、一定の距離を保ちながらも、ずっと見守り、ときには支えてた人物です。
倉蔵は、懐剣を手に立ち向かおうとしますが、アシリカの蹴り一発で倒され、さらに、散々に殴られます。

倉蔵は血反吐を吐きますが、それでもアシリカの手は止まらりません。

北の零年「ぼこぼこ」

見ていられなくなった志乃の「やめて!」という言葉で、ようやく倉蔵は雪の上に放られます。

北の零年「やめて!」

アシリカは怒りの収まらない様子で刀を抜きますが、志乃がその動きを必死に押さえ、倉蔵は命からがら、逃れ去ります。

北の零年「アシリカから逃げる」


夜、留守の倉蔵の宿舎に、堀部らが訪ねてきて、応じた手下に詰め寄ります。
「味噌樽一つとは、どういうことか聞きにきたのだ。」

「え?渡された金の分は、あれだけなんですよ。」手下の言葉で、押し問答が始まりますが、怒った馬宮が中に上がりこもうとすると、手下は銃を突きつけます。

深夜、倉蔵の宿舎から米を盗もうとした馬宮が手下の一人を刀で切りつけます。
騒ぎを聞きつけ堀部たちが集ったところへ、倉蔵が「どうした!」と現れます。
人々を前に「これは、弱りましたね。」と、付け込むように声を掛けると、倉蔵の意を汲んだ手下が、馬宮を役人へ引き渡すと宣言します。
そこへ、馬宮の妻の加代(石田ゆり子)が走り出て、「お願いでございます。」と倉蔵の前に伏して許しを請います。
「倉蔵様。どうかこの人を助けていただけませんか。」

叱る馬宮に、加代は言い返します。
「あなたはまだ分かっておられないのですか。あなたがお役人に引き渡されてしまったら、私はこれから先どうやって生きていけばいいのです。雄之介を亡くし、あなたまで無くしたら、私はこれから先どうすれば!」
聞いていた堀部も、「倉蔵、わしからも頼む、この通りだ。」と、加代に並んで雪の上に手をつきます。

倉蔵の立場が、今や、稲田家の人々と逆転したことを示すシーンです。

倉蔵は、堀部を助け起こし、加代を立たせて雪を払ってやります。

北の零年「加代を助け起こす」

馬宮を解放するようにと手下に命じると、「目先の損得ばかりを考えていた私が、悪うございました。」と、倉蔵は殊勝に頭を下げてみせます。
「皆様あっての商い!…米は、皆様方に、等しくお分けいたしましょう。」

北の零年「皆様あっての商い」

驚きと感謝の言葉を口にする人々に、演説よろしく、「いずれ返していただければいいのです。これからは、この倉蔵に、何事も、お任せください。」そう言うと、さらに頭を下げます。
「かたじけない」堀部が深々と礼をすると、村の人々がそれに倣うのでした。


ある夜、倉蔵は一人の女性と床を共にします。

北の零年「寝所1」

その建物は、かつて、稲田の人々が、殿様のためにと一から建てたお屋敷ですが、いまでは倉蔵の住まいとなっています。

北の零年「寝所3」

右手の甲で、女性の頬をなでる倉蔵。
横たわっているのは、涙を浮かべた馬宮加代です。


朝、倉蔵を尻目に、出された食事をがつがつとむさぼる加代。

北の零年「寝所4」

倉蔵は「そんなに腹が減っていたのか…。」とつぶやきます。

北の零年「寝所・そんなに腹が」

そして面白そうに、「食え。思う存分、食え。」と言った後、加代の背後から肩にあごを載せ「武士のおなごとて、哀れなもんよ…。」と続けます。

北の零年「寝所5」

一瞬うるさそうに倉蔵の声の方へ視線をやる加代ですが、再び、箸を動かします。

加代は馬宮の子供を妊娠していましたが、馬宮に生活能力は無く、飢餓にあえぐ中なのに孕ませたことで、加代は、馬宮に憎しみを抱いていました。
妻が倉蔵に身を売っていたと知った馬宮は、加代を離縁してしまうのですが、雄之介に死なれ、二度とわが子を失いたくない加代は、子供は倉蔵の子と偽って育てる決意を固めます。


5年後、倉蔵は戸長となっていました。
開拓史出張所に一室を構え、稲田家の家臣だった人々を事務室で雇っています。

夫の帰らぬまま、今では牧場主となり育成した馬で農耕に寄与している小松原志乃を、倉蔵は、役場に呼びつけます。
志乃が入室すると、椅子に座って背中を向けたまま鏡越しに出迎えるという、失礼な態度で迎えます。

北の零年「鏡で出迎え」

表情の硬いまま「何の御用ですか。」と問う志乃に、「相変わらず愛想がないですなぁ。」と返すと、翻弄するような言い回しで用件を告げます。

北の零年「あいかわらず愛想が無い」

「川久保の農地の件、聞きましたよ。馬に土地を耕さしているとか。ま、そんなことに馬を使うくらいなら、もっと他のことに使えるんではないですかなぁ?例えば…戦とか。」
「戦?」唐突な話題に戸惑う志乃の前で、倉蔵は声を張り上げ「おい!志乃様のような大事な客が来てるんだぞ。茶ぐらい、もってこぉい…。」と部屋の外に命じ、さらに話を続けます。

「西郷隆盛。これが九州で戦を起こしているのは御存知でしょう。鎮圧のためにねぇ、この町からも人を出すことになった。あんたのとこ、娘だったなぁ。戦に出す訳にはいかないだろ。」

北の零年「あんたのとこ女だったな」

無言で聞く志乃に、「実は、馬も足りないんですよ。」と、漸く本題に入ります。

北の零年「ぬるいの前 馬も足りない」

「あなたの馬は素晴らしい。開拓史の間でも評判になって、是非、戦に欲しいと言ってきている。名誉な話じゃないですかぁ。」

戦のために作った馬ではない、と志乃が断り、帰ろうとしたそのとき、堀部が茶を持って入室します。

倉蔵に「遅いぞ!」と怒鳴りつけられ、下僕のように従わされているかつての家老・堀部の姿に驚いている志乃の見ている前で、倉蔵はさらに、茶碗を床に叩きつけ、「ぬるい」と一言だけを告げ、堀部に始末させます。

北の零年「ぬるい」


そして大きな声で、一気にまくしたてます。「これから収穫というこの大事な時期に男手を取られたらこの町どうなると思う!」

「馬を差し出したら、戦に出す男の数は半分で良いと国が言ってくれたんだよぉ?」
「あんたがそう頑固に言い張るなら、この町の人間全員敵に回すことになるぞ?」
続けて、一転、なだめるように声色を変え、「あんたのところだけ、良い思いをしているといってね。」と言うと、何も答えられないでいる志乃に、結論を告げます。
「まぁあんたが幾ら嫌ぁと言ってもねぇ、馬は徴用されるんだ。国がそう決めた。」

北の零年「お偉いお役人が近いうちに」

「お偉いお役人が、近いうちに、徴用に来る。そういうことだ。」

北の零年「そういうことだ」

そう言われて何も言い返せないまま倉蔵をひとしきり睨んだ後で出て行く志乃を、見送ります。


不遜な態度で町の人々を支配する倉蔵ですが、馬宮から奪った加代を、妻として大事にし、加代が産んだ馬宮の子を我が子と信じて疑わずにかわいがっています。
馬宮の事は、役場の馬番として雇い入れており、そのお陰で、仕事中も酒を手放せない状態の馬宮の生計は成り立っているのでした。


北の零年「イナゴに驚く2」

突然、町を、空が暗く見えるほどのイナゴの大群が襲います。

北の零年「イナゴで暗い」

農民達の長年の苦労の末にようやく実った稲も畑の作物も、壊滅的な被害を受けます。

そこへ、馬を徴用しにやってきたのは、三原と姓を改め、開拓史の書記官となった、かつての小松原でした。
開拓地の人々のために稲を求めて札幌に着いたものの、直後に病に倒れた小松原英明は、そのときに世話になった女性と結婚、婿養子となっていたのでした。

「だからイナゴのせいで、事情が変わったんです!」
ほんの数日前、横柄な態度で志乃に馬を供出するようにと伝えた同じ部屋で、倉蔵は、土下座しながら三原英明に訴えます。

北の零年「イナゴのせいで」

「馬さえあれば、百姓達はきっとまたやる気になってくれる。今、あの馬だけが、この町の救いなんです!」
何度も頭を下げながら「だからお願いいたします!このとおりです!」と、懇願します。
そこにはもう、かつての、我欲のために一計を案じ他人を陥れてでものし上がろうとする倉蔵の姿はありません。

北の零年「馬さえあれば」

「自分の馬でもないのによくそんな勝手な事が言えるな。」三原が口を開きます。
「下郎。我らの戸籍を使って扶持米をかすめ取った下郎だから仕方がないかっ。」手にしていた手袋を、倉蔵に叩きつけます。
倉蔵は一言も返せません。

北の零年「下郎と言われる」

そのとき、「私の主人を下郎呼ばわりですか。」そう言いながら、加代が部屋に入ってきます。
「…主人?」予想外の言葉に、語気を弱めて三原は倉蔵を見下ろします。
加代は脅えたような倉蔵の前に屈み込み、声を掛けます。「頭をお上げなさいあなた。卑屈になることはありません。皆をなんとか食べられるようにし、この町を作ったのはあなたです。」
「…加代。」倉蔵がほんの少しだけ顔を上げます。

北の零年「加代」

確かに、三原の言うように、倉蔵は開拓団の分の扶持米を「貸し付ける」という形で人々に配り、戸長の座に納まりました。かすめ取ったと言われれば、それまでです。
しかし、その前に開拓団の扶持米を受けとることを三原、かつての小松原が断ってしまっていたため、例え詐欺まがいの手段でも倉蔵がこの土地に米を持ち込んだことで、人々が飢えから救われたのは事実です。
さらに、倉蔵は、稲田家の元家臣達に、開拓史の役人、あるいは馬番と、様々な職を与え、みんなの暮らしが立つ様にしたのです。

加代は、三原を責めるように「小松原殿。あなたはこの土地を捨てた。妻や子を捨てた。あなたに何が言えるんですか。」と言い放ちます。

北の零年「あなたはこの町を捨てた」

三原は「約束どおり馬を出せ。さもなければ全員徴兵だ。」ようやくそれだけを言うと、話を打ち切ってしまいます。

北の零年「全員徴兵だ」


その夜、窓の外では人々が列をなして町を去ってゆきます。

北の零年「夜逃げを見送る」

倉蔵は為す術も無く、酒を飲みながらただ見送ることしか出来ずにいます。

北の零年「夜逃げを見送る2」

「…終わりだ。みぃんなこの土地を捨ててゆく。終わりだ。」
かつての倉蔵なら、いち早くこの町を捨て、逃げ出していたことでしょう。

北の零年「みんなこの土地を捨てていく」

足がもつれ、しりもちをつき、さらにそのまま飲み続けます。

北の零年「しりもち」

心配そうに近づいてきた加代に、顔を向けることができません。

北の零年「加代の顔を見れない」

そんな倉蔵の打ちひしがれた頭に、加代は無言で手を差し伸べ、なでるのでした。

北の零年「加代に頭をなでられる」


映画はまだ続きますが、香川さんの出番はここまでです。



香川照之さん以外のキャスト

吉永小百合 豊川悦司 柳葉敏郎 石原さとみ 吹越満 奥貫薫 寺島進 榊英雄  大後寿々花 阿部サダヲ 藤本浩二 及森玲子 大高力也 今野雅人 久松信美 紀伊修平 澤田俊輔 三浦誠己 所博昭  岡元夕紀子 アリステア・ダグラス 猪口卓治 菊池龍 大久保聡 竹内和彦 江藤大我 HIDE 松下孝 新虎幸明 石井浩 萩原友 麻生奈美 森川絢 中野美絵 樋口貴子 大沼百合子 相坂美香 森下千帆 島田真由美 小林香織 小川敏明 加藤英真 松江隆 中山圭大 斉木テツ 依田真一 関戸将志 永井寛人 入沢勝 鮫島博巳 小東東洋 菅原俊介 駒村好文 鈴木信明 石田哲也 山田陽 平野萌香 広岡和樹 筒井拓視 駒走秀樹 八巻博史 小川賢治 佐々木優 松川妥 新野高久 相原雄太 松岡準弥 服部一真 井上浩太 森田耕平 上野智之 大野清志 別当優作 猪又輝之 藤原慎一郎 佐羽英 黒川雄也 桐生梓 斉藤洋子 西田昌弘 神田正貴 野沢尚宏 昼間りえ 筒井理恵 つかさまり 吉居亜希子 勅使河原結 新田幸絵 中野雅之 山村祐介 本間康之 中田雄三 笹川奨 原田統 森啓祐 遠藤博之 植村潤 大川淳司 飯田孔明 小幡誠 野崎純平 油谷剛喜 鈴木立統 見澤昌哉 小西椋 青木千奈美 菅有寿 谷村拓哉 アニカ・カールソン コリン・スウェインソン 淡路人形座 竹本友庄 鶴澤友吉 吉田新九朗 吉田史興 吉田幸路 鶴澤友重 吉田宏樹 坂東千太郎 東映アカデミー プラグ・イン フェイムステージ フジアクターズシネマ 劇団ひまわり ユニビジョンサクセス フレッシュハーツ グループエコー アーバンアクターズ 放映プロジェクト 夕張市の皆さん 静内町のみなさん 浦河町のみなさん 忍成修吾 金井勇太 中原丈雄 木下ほうか 戸田昌宏 山田明郷 田中義剛 モロ師岡 馬渕晴子 大口広司 藤木悠 平田満 鶴田真由 石橋蓮司 石田ゆり子 渡辺謙


監督 行定勲
脚本 那須真知子
撮影 北信康
音楽 大島ミチル
照明 中村裕樹
美術 部谷京子
衣装・デザイン 宮本まさ江


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