
2005年3月19日劇場公開(松竹)
2004年製作、香川照之さん38-39歳頃の作品です。
香川照之ファン的みどころ
とても珍しいことに、
「カッコいい系」ビジュアルの香川さんを見られます。

宅見零児(たくみれいじ) 42歳
コンピュータ会社・KOKの元会長
人工知能研究の世界的権威、
天才中の天才科学者と評されています。

最愛の妻と息子を亡くした悲しみから厭世的になり、
全てを壊滅させ自分の理想郷を作ろうと企み、
巨大破壊ロボット「ブラックオックス」を操ります。
香川さんのセリフの言い方と体の動きの緩急が、
不気味さを感じさせます。
また、香川さんの顔がアップになるシーンでは、
複雑な心情を語るかのように、
細やかに一瞬一瞬で表情が変わりゆくので、
片時も目を離せません。
役どころは、人類の敵、悪人なのですが、
息子を失った父親の悲哀を表情に漂わせ、
憎みきれない人物像となっています。
宅見零児と主人公の正太郎が二人きりで話したシーンの直後、
正太郎に向かって母親が、
「お父さん、どれだけ正太郎のこと愛してたか」と、
話して聞かせる場面では、
自然と、つい今しがた見た、
息子を想う宅見零児の表情が思い出されます。

ブラックオックスには、
宅見零児の息子のあらゆるデータが記憶させてあります。
宅見零児にとって、
息子の「ひかる」の生まれ変わりなのです。
鉄人に倒されたブラックオックスに向かって、
上空のヘリの中から、
「ひかる!立て!立つんだ!」と声を掛ける香川さんの声色は、
父親の魂の叫びそのものです。

この映画は、
善悪の戦い、ロボットの戦い以外に、
親子愛や友情、人間の協力、人類愛などが描かれています。
そうかといって、重々しいものではないので、
「鉄人28号」のリアル世代も、小さな子供も、家族ぐるみで、
それぞれの立場で楽しめる作品に仕上がっています。
この作品の数年後には、
香川さんと何度も共演する事になる、
まだあどけなさの残る蒼井優さんや、
幼さのかわいらしい池松壮亮さんの演技も楽しめます。
また、
香川照之さんの著書「日本魅録」の中では、
この映画の撮影に絡めて、
冨樫森監督との思い出、
そして俳優としてどのようにあるべきだと考えているかが、
語られています。
(P.110「アニメ実写版の面々①」)
香川さん以外のキャスト